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タイトル 猫の手は借りられますか〜図書館肉球譚〜

第29回 伝説の「公共図書館員のタマシイ塾」、第2幕は?

単なるテクニックや愚痴のこぼし合いを越えた学びを求める図書館員のコミュニティ、「公共図書館員のタマシイ塾」(以下「タマシイ塾」と略す)。図書館の存在意義や図書館員として働く意味を問い直す稀有な場として、2010年代における図書館界のレジェンドと呼ばれることがあります。その運営に立ち上げから幕引きまで携わっていた私がいうのは、ちょっと気恥ずかしいのですが。

この6月、オンラインサロン「本の場」で、タマシイ塾を振り返るウェビナーが開かれました。メインの語り手は、タマシイ塾の運営母体である実行委員会の初代事務局長だった森田秀之さん(株式会社マナビノタネ代表取締役)。私も森田さんの応援団(生き証人?)として、この催しに参加しました。いろんな気づきのある催しでしたが、その中で森田さんが、ご自身にとってのタマシイ塾は第2期まで、とおっしゃったのが印象的でした。

タマシイ塾は2009年から2018年までの約10年間、1年か2年に1回の割合で開催されました。第2期までというのは最初期にあたります。第3期以降も志をもつ人たちの学び合いの場であり続けましたが、図書館界の外から講師を招くことがほとんどなくなったのは確かです。

挿絵
※挿絵はクリックで拡大します。

「井の中の蛙」と言いますが、蛙だろうと猫だろうと、この変化の激しい時代に図書館員が業界という井戸の中しか知らないのでは、リスクもチャンスも気づきにくいでしょう。業界団体はいくつもありますが、せっかく職場を離れても出会うのが同業者ばかりだとしたら、何より息苦しいのでは?

以前にも書いたように、異なる業種、異なるセクターに属する人たちが共通の関心をもって集まり、学び合うコミュニティに、私は大きな意義を感じます。異業種交流会のような一過性の繋がりと異なり、お互いの違いを認め合ったうえでの深い相互理解に導かれる可能性が高いのです。そのような関係を経験しておくことは、関心も背景も多様な住民と共に図書館を運営するときにも、きっと役立つでしょう。

一度は幕を閉じたタマシイ塾に、もし第2幕があるとすれば、それは図書館界の誰かと、業界外の誰かの化学反応からではないかと妄想します。もちろん、その幕開けを担うのが森田さんや私である必要はまったくないし、名前も変わればよいでしょう。

図書館員が業界外の人々と出会う学び合いのコミュニティに参加するなら、私のオススメは「学習する組織」と「NVC(Non Violent Communication)」に関するものです。もちろん、これらは私の経験にもとづく例示に過ぎません。司書にとって魅力的な「学び合いのコミュニティ」は、他にもあるでしょう。

未知の領域に踏み出す時には恐れがつきもの。でも、得るものは大きいはずです。図書館界の外の学びのコミュニティへ、勇気をもって一歩を踏み出してみては?お試しあれ。

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