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タイトル 猫の手は借りられますか〜図書館肉球譚〜

第24回 春だから、コミュニティに「入学」しよう。

挿絵
※挿絵はクリックで拡大します。

日本では、春は卒業と入学の季節ですね。私は昨年の3月、あるプログラムに「入学」しました。システム・リーダーズ実践コミュニティ(https://sites.google.com/view/system-leaders/)です。システムといっても、情報システムとも、もちろん図書館とも直接の関係はありません。では、なぜ?

公共図書館は、誰もが自由に、遊ぶように学ぶ楽しみを実現するしかけです。でも、そこで働いている人たちは、楽しいというより苦しげに見えることが多すぎます。どうしたら、この状況を変えられるのか、というのが私の長年の疑問でした。

十数年前、ピーター・センゲという人が唱える「学習する組織」にそのヒントがありそうだ、と気づきました。図書館員自身が、共に学び合い、個人としても組織としても成長することができるようになる。図書館が、そんな「学習する組織」に変わればいい。

自己流で試行錯誤を繰り返すうちに、「学習する組織」について基本からちゃんと学びたい、と思い始めました。そこで出会ったのが、ピーター・センゲから直接学んだ福谷彰鴻さんが主宰する、このプログラムだったという訳です。図書館はどうすれば「学習する組織」に変わるのか。そんな問いを携えて参加した私の気分は、ほとんど「入学」でした。すべてオンラインなんですけどね。

図書館に限らず、職場でも、地域でも、そして家庭でも、心がざわついたり、沈んだりすることはよくありますよね。なんとかしようとするけれど、何度もしくじり、ドツボにはまっていく。実はそうしたモヤモヤこそが、「学習する組織」を学ぶ者にとっては、新たな学びの発端なんです。自責にも他責にも陥ることなく、「何がそうさせるんだろう」と問い、そもそも私たちはどんな願いを持っているのかを確かめる。そんな内省は一人では難しいけれど、心を開いた者同士なら対話を通じて深めることができます。
 
最初、なぜこのプログラムは教室とか講座ではなくコミュニティと名乗っているのだろう、と思いました。でも、こんな深い対話を安心してできる場こそコミュニティと呼ぶのにふさわしい!そんな場で仲間と共に学べるありがたさを感じ続けた4カ月でした。

図書館で二十数年働く間には、振り返るのもつらい失敗を何度もしました。心の闇に押し込めた「黒歴史」の蓋を開け、内省的に捉え直すなんて、コミュニティなしでは不可能だったでしょう。そして、学習は一人で知識を詰め込む苦痛じゃなくて、友人たちと共に経験する喜ばしい成長の経験だ、とあらためて確信したのです。

図書館は万人の学ぶ喜びを支援する機関です。そこに働く者だって、日々、学ぶ喜びを感じながら生きてよいはずです。高品質な学びのオンライン・コミュニティが登場し始めた今こそ、あなたに合った学びのコミュニティを探しませんか。ぜひ、お試しあれ。

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