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タイトル 猫の手は借りられますか〜図書館肉球譚〜

第9回 SNS中毒VS.図書館習慣

 集客施設を運営する会社にお勤めの方から、「図書館はうらやましい」と真顔で言われたことがあります。公共施設といえば集客が下手と相場が決まっているのに、なぜ?不思議に思い聞き返したら、こんな会話となりました。

「図書館で借りた本って、必ず返さなきゃならないですよね。」
「もちろん。」
「せっかく来たんだしお金もかからないから、また借りて帰るわけですよね。」
「たしかに、それが普通です。」
「つまり図書館のお客さんって、高い確率でリピーターになるんでしょ?」
「!」

 会社員としては新米の私は、バリバリのビジネスパーソンって面白い見方をするなあ、と感心すると同時にこうも思ったのです。
「図書館って習慣製造マシ〜〜ン!(ドラえもん風に発音)」

 昔々「活字中毒」という言葉がはやった時代があったけど、近頃は耳にしませんね。そのかわり、世にはびこっているのがSNS中毒。電車やバスの中でかつては本を読んでいただろう人々も、今ではスマートフォンを眺めています。電子書籍を読んでいる人もいるでしょうけど、SNSにアクセスしている人の数には到底かなわないのでは?なぜなら、本をはるかに上回る中毒性があるから。それどころか、利用者を中毒にするように設計されているのだから。

 私自身の苦い、そして現在進行中の経験からいうのですが、SNSはタイム・マネジメントにおける最大の難問であり、とりわけ読書の時間を侵食します。もちろん人間関係に役立つことこの上ないツールではあります。私だってその恩恵にあずかっていますしね。しかし、同時に貴重な時間を奪っているのも否定できません。

挿絵1
※挿絵はクリックで拡大します。

 だからこそ思うのです。図書館はこの断ち切りがたい中毒をデトックスし、健全な読書習慣に置きかえるための切り札ではないか、と。図書館によって強化され、SNS中毒を制するほどの効能をもつに至った読書習慣を、私は「図書館習慣」と命名します。

 もちろん、漫然と図書館に通っていてもSNS中毒に対抗することは困難です。自分自身を実験台にして効果があった図書館習慣養成法を、いくつかご紹介しましょう。

 まず、いつでも貸出し制限一杯の本を借りること。貸出冊数の上限が10冊なら、常に図書館の本を10冊手元に置きます。そうすれば、いつでもその時々の気分にあった本を手に取ることができるし、頻繁に図書館に通わざるを得ない必然性も生まれます。

 次に、借りている本の紹介をSNSへの投稿の定番にすること。中身を全く読んでなくても構いません。ブックデザインの話に始まって、内容に関する憶測や、借りたのに読めない事情に至るまで、書けることはいくらでもあります。投稿のネタ探しに悩まされる心配から解放されることは間違いありません。

 最後に、友人・知人に頼んで自分へのオススメ本を紹介してもらうこと。紹介された本を図書館で探し出し、読んでみて「あれ、読みました!」と感想を伝えるのです。こうして出会う本の数々は、ことごとくあなたを別世界に誘う「どこでもドア〜〜!」となるに違いありません。どこまでもフラットなSNSの世界に疲れたら、是非お試しあれ。

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