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タイトル 猫の手は借りられますか〜図書館肉球譚〜

第55回 司書課程の不人気科目で人生が変わる!?

8月後半は5日間連続で合計15回、某大学の非常勤講師を務めました。「図書館制度・経営論」という、司書課程でも特に不人気(らしい)科目です。

90人以上の学生さんから授業の振り返りをオンラインで提出してもらうのだけど、毎日、50件くらい質問があります。感想の数はそれ以上。全質問と回答、そして感想の抜き書きをつくるのに、1日につき約5時間かけます。授業と併せれば10時間労働で、報酬には見合わないけど、面白いからいいや。

この科目を担当するようになって3年目ですが、今年はリアクションの内容がいつもと違うのです。「授業が楽しい」「面白い」から、果ては「ものの見方が変わる」「人生が変わる」といった熱いワードが頻出します。当然、うれしくて張り切ります。学生さんにうまく乗せられているのかもしれません。

もちろん、それなりに授業の工夫はしています。

挿絵1
※挿絵はクリックで拡大します。

毎回冒頭に、四半世紀に及ぶ我が図書館人生の「黒歴史」を素材にしたクイズがあります。回答は3択で挙手をしてもらいます。落語でいえば、マクラに当たる部分ですね。教科書には載っていない面白ネタを取り揃えました。

振り返りの全質問に答える時間もあります。人生相談や読書相談にもちゃんと答えるので、授業時間の1/3くらいがこの回答の時間。リクエスト葉書を読み上げてコメントするラジオDJの気分ですね。紹介されてコメントがつくのは、学生さんにとって嬉しいことかもしれません。

毎回、小グループのディスカッションも1~2回入れます。最初の1分間は自分の考えをメモしてもらい、そのあと4分がディスカッションです。強制参加ではないけれど、「違う見方を知ることができてよかった」といった感想が多数ありました。

絵本『としょかんライオン』を朗読したのも評判が良くて、「どうやったら読み聞かせは上達するんですか」と複数の学生さんに尋ねられました。いや、本当に上手い人の朗読はこんなレベルじゃないけど、もう1冊増やしてもいいかな。

合間に図書館経営におけるAIの有用性を説明して、実演もしました。これも評判良かったですね。「大学では、AIは危ないみたいなことばかり言われて、個人的に使うのもよくないと思いこんでいました」って……その教育方針はまずくないですか?

最終回、こんな感想をくれた学生さんがいて、胸が熱くなりました。

「自分が本を通して救われてきたからこそ、その体験を他の人にもしてほしいと思っていました。なので今回の授業はとても参考になりました。ますます図書館を自分でも経営したいと思いました。フリー・ライブラリアンというキャリアを自分も歩みたいとこの15回の授業を通して強く思った。自分がやりたいと考えていた事と先生が今回教えてくださったことがマッチしていてすごく感動した。自分は今後何をやっていきたいのか明確になっておらずすごく悩んでいたのですが、授業を通して図書館を支えていく側の人間としての生き方をしていきたいと思うようになった。」

ちなみにフリー・ライブラリアンは私の自称で、図書館に所属しないで活動するライブラリアン、漢字にすれば野良司書です。これからの時代、どこでもナレッジ・マネジメントが求められるし、私設図書館的なものも増えているから、図書館に勤めなくてもライブラリアンの活躍の場はあるよ、と最終回で語ったのでした。「勇気をもらった」「報われた」といった感想を多数いただきました。

ご要望があれば、現役図書館員向けのショート・バージョンも用意します。研修担当者や勉強会主宰者のみなさん、遠慮なく声をかけてくださいね。お試しあれ!

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