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タイトル 猫の手は借りられますか〜図書館肉球譚〜

第63回 とよちゃんと呼ばれたい。

あなたは職場でどう呼ばれていますか?あなたの呼ばれたい名前と一致していますか?

図書館長になるまで、私は「とよださん」と呼ばれていました。そのことを当たり前のように受け入れてもいたのですが、静岡市立御幸町図書館の館長に就任したとき、自分はどう呼ばれるべきか、少しばかり悩みました(呼ばれたい、ではなかったことに注意)。できるだけ、上司と部下の関係がフラットな組織にしたい、そのためには、引き続き「とよださん」と呼ばれるのが一番。そんな風に思ったのです。

ところが、これがなかなか簡単ではないのです。「とよださん」と呼ばれることは滅多になく、大抵は「かんちょー」。なかには「てんちょー」と呼ぶ人もいました。その人曰く、前職が小売店勤務だったので、そのときの癖が抜けないとのこと。「もう、好きなように呼んでくれ」と思うようになったのも、自然の成り行きです。

愛知県の田原市図書館で公募の館長に就任したときは、すっかり高邁な?理想を忘れ、最初から館長で通しました。実際の運営がフラットなら、呼び名は館長で構わない、という理屈はあったのですが、要は、前職での挫折に懲りたのですね。8年前に、ようやく図書館長という役職を離れ、職業上"長"がつく役目に就くこともほとんどなく、現在に至っています。

この数年、いろんなワークショップやセミナーに参加するようになって、とても新鮮に感じたのが、自己紹介の際に「呼ばれたい名前」を名乗るように求められることです。最初は「とよさん」だったのですが、なんとなく違和感があります。自分は、今まで誰かに「とよさん」なんて呼ばれたことがない!

そういえば、今は亡き年長の友人が私のことを、いつも「とよちゃん」と呼んでいました。あの人は、生まれて初めての「兄貴分」だった。その声を思い出すと、胸の奥の方にほのかな暖かみを感じます。こうして、私は「とよちゃん」となることに決めました。まさに、呼ばれたい名前!呼ばれたい名前を考えることは、自分自身に「どう呼んでほしい?」と尋ねることでもあります。それは自分をいたわる練習なのかもしれません。最近、気になっている言葉を使えば、「セルフコンパッション」の第一歩といえそうです。

仕事で呼ばれたい名前、比較的プライベートな場で呼ばれたい名前、そして家族に呼ばれたい名前。それらは違って当然だと思います。とはいえ、呼ばれたくない名前で呼ばれ続けるのは、苦痛ですよね。それから、組織内のポジションを気にせず自由な意見を交わしたいミーティングや組織内ワークショップで、お互いの役職名を呼び合うのは、やはり、避けた方がよいと思うのです。

挿絵
※挿絵はクリックで拡大します。

著者名や本のタイトルの間違いにはすごく敏感になるのが司書というもの。背ラベルの一文字の違いにも目を凝らしているのですから、お互いの呼び名にも、もう少しだけ丁寧でありたいものです。手始めに、館内の会合で司会を任せられたら、参加者全員に「今日、呼ばれたい名前」をリクエストしてみてはどうでしょう。その人がその場において、どんなふうでありたいかをそっと教えてくれるかもしれませんよ。もちろん、館長や上司に尋ねることもお忘れなく。上級編として、好きな物語の登場人物から名前を借りるのも楽しそう。ぜひ、お試しあれ。

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