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タイトル 本の風

第66回 「栄冠は君に輝く」

 白球を追う高校球児の姿に目が離せなかった夏だった。なにせ地元の県立高校が秋田県代表である。57年ぶり二度目の甲子園出場である。盛り上がらないわけがない。大袈裟ではなく全市をあげての熱狂だった。

 県大会から熱かった。強豪と言われる高校やシード校が早々に倒れ、準決勝4校のうち3校が県南勢。横手市内の県立高校がガチンコで対決する様子はテレビ中継があり、どちらが打っても守っても歓声をあげて見守った。決勝戦も県南対決。相手は2016年の県代表の大曲工業。急遽、市の生涯学習施設でパブリックビューイングが行われる中、勝ち取った甲子園の切符!おめでとう横手高校!

 図書館では連日新聞各紙の記事をスクラップしたり、高校の周年記念誌などを並べた企画コーナーを設置した。57年前の甲子園出場のことを同窓会誌に掲載されているものを探し出したり、地元新聞の縮刷版から当時の試合の記事を見つけ拡大コピーもした。そうこうしているうちに、当時の関係者ご遺族からお借りした甲子園のペナントや大会記念写真を加えたりして、日に日に企画コーナーはボリュームが増していった。

 試合当日の甲子園球場には横手市から2000人とも言われる大応援団が駆けつけ、一塁側のアルプススタンドがびっしりと埋まっていた。吹奏楽部員とOB達が奏でる演奏と、音楽に合わせた声援はテレビの画面越しにも伝わってきた。残念ながら甲子園での1点は遠く、初戦敗退となったが、選手たちが見せてくれたひたむきな姿に最大の拍手を送りたい。

 野球に限らず、どんなスポーツも観戦することが好きである。その瞬間その一瞬の真剣勝負を見ていると、わくわくとドキドキで心が弾む。スポーツものの小説やコミックも大好き。そんなに上手い展開があるのかと思いつつも、まんまと作者の意図にはまり、感動しすぎて、グズグズと涙し、ティッシュペーパーが山積みということはよくあることだ。
 
 高校野球期間中には選ぶ小説も野球ものにしてたっぷり浸っていた。『雲は湧き、光あふれて』(須賀しのぶ/著、集英社、2015)は甲子園を目指す少年たちの小説集だ。
 表題作は、太平洋戦争中、ひたすらに甲子園を目指したバッテリー、滝山亨と鈴木雄太の物語。地区大会を勝ち抜き甲子園出場を手に入れたのは戦火が激しくなりはじめた昭和16年、大会の中止が告げられる。共に戦ったチームメイトが次々に戦地へと赴く中、二人も例外ではなかった。野球ができることが当たり前ではなかった時代を過ごした高校球児の思いが、時を超え、大会歌に重なっている。

 テレビから流れる大会歌は、不思議と口ずさむことができる。長い歴史の中でどれだけの少年たちが憧れ夢見た場所だろうと思うと、胸がいっぱいになった。

 スポーツものの本はかなりの数がある。どんな本を読んだらいいのか悩む人は『本の雑誌』2022年4月号を読んでほしい。特集は"スポーツ本の春!"。名場面が描かれたノンフィクションも名作と呼ぶに相応しい物語も混ぜ混ぜに、野球、陸上、サッカーなどなど、50作品が紹介されている。読みたい1冊が見つかるはずだ。(石)

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