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タイトル Hidden Library,Invisible Librarian

06. ぼくのともだちおつきさま

挿絵1
『ぼくのともだちおつきさま』
アンドレ・ダーハン 作, 
きたやまようこ 文
講談社,1999

 皆様こんにちは。怒涛の夏休みが終わり、ほっと一息つける9月になりました。毎日、書架は整理しているものの、次の日には元通り・・・というか、もっとぐちゃぐちゃに?! という夏休みから一転、じっくりと棚に向き合う時期とも言えそうです。大変だった書架の整理も、それだけたくさんの方に手にとっていただけたんだな、と思い、感謝でいっぱいです。

 さあ、9月、皆さんは何をイメージしますか? 私は断然「月」です。美しく幻想的な月ももちろんいいのですが、月見団子のおいしさも欠かせないですね。食い意地が張っているところを存分に発揮したところで、「月」をテーマにした絵本を紹介したいと思います。

 一冊目は、『ぼくのともだちおつきさま』(※1)です。「天体としての月」というよりも、いつも自分と一緒にいてくれる「大切な存在としての月」として描かれています。色味はとてもやさしく、それでいて表情豊かな「月」と「ぼく」の姿から、ストーリーを感じることができます。アンドレ・ダーハンの描く月は、その後テレビコマーシャルでも使用されていました。
 添えられた文章についても、決して長くはないのですが、読めば読むほど、大切にしたいと思える言葉がつづられています。出会いのすばらしさを描くこの本は、子どもはもちろん大人にも読んで欲しい一冊です。かくいう私も、大切な出会いをした人にこの絵本をプレゼントしたことがあります。その後、その人は人生のパートナーとなり、この絵本はわが家の本棚にいます。一冊の絵本がつないでくれる縁、というのもロマンチックと言えそうです。

 二冊目は、『おつきさまこんばんは』(※2)です。赤ちゃん絵本の定番とも言える一冊ですね。作者はこのコラムで何度も登場している林明子さんです。初めての絵本でも選ばれることの多いこの本は、赤ちゃん絵本の中でもストーリーが描かれているのが特徴です。夜の暗さと月の明るさのコントラストがとても美しく、ストーリーを進めてくれる2匹の猫の存在も魅力的です。お月さまの表情が豊かなのも、人気がある理由の一つでしょう。わが子も小さい時にこの本が大好きでした。裏表紙を見せると同じように舌を出してくれていたのも良い思い出です。

 三冊目は、『月へ』(※3)です。月面着陸を試みるアポロ11号をテーマにした科学絵本です。乗組員のこと、宇宙船の中でのこと、月面着陸のミッションのことをわかりやすいことばと絵で伝えてくれています。裏表紙の見返し部分にある手記も読みごたえがあります。
 苦しい訓練を乗り越え、選ばれた3人の宇宙飛行士。そして、ロケットの仕組みを考えた研究者たちの努力。今でこそ、宇宙旅行なんていう話も聞こえてきますが、当時のことを思えば、宇宙へ行くのは命がけです。空に浮かぶ月に人間が到達したんだ、という驚きと感動を味わえる一冊です。

 「月」で思い出すのは、わが子が小さかった頃のこと。夜になるとむずかる子を抱き、ベランダに出て、ゆーらりゆーらりしながら、「お月さまだよー、今日もきれいだねぇ」と話しかけながら寝かしつけていました。姿がかわりつつも、いつもそこにいて(新月の日はありますが・・・)、見守ってくれているような月に支えられていたような気持ちでした。そんな月を、「今日は月がきれいだね」と語り合えるほど成長したわが子たち。私にとっては、不安な気持ちを共有してくれた戦友のような存在だったりします。
 今、育児中で不安を抱えている皆さんもぜひよかったら月を見上げてみませんか?そして、図書館は育児中の親御さんがゆったりできる場でもあります。本を読むだけではなく、少し息抜きできる時間を図書館で過ごしてみませんか? 皆様のご来館をお待ちしております。


  • ※1 『ぼくのともだちおつきさま』,
      アンドレ・ダーハン 作,きたやまようこ 文,講談社,1999
  • ※2 『おつきさまこんばんは』,
      林明子 作, 福音館書店, 1986
  • ※3 『月へ ―アポロ11号のはるかなる旅―』,
      ブライアン・フロッカ 作・絵,日暮雅通 訳,偕成社,2012

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