back number

タイトル Hidden Library,Invisible Librarian

4. 一人で、一から。

“ワンパーソンライブラリー”
“ソロライブラリアン”

一人で運営する図書館や司書を指すことばです。
病院図書館の多くは、この体制です。

とはいえ。

小さくても、見えなくても、図書館。
一人でも、司書の仕事は変わりません。

その司書が着任した病院でも、図書館で働くのは自分一人でした。以前に別の図書館で働いたことはありますが、病院は初めてです。図書館の経験はあっても、経験したこと以外は、よくわかりません。

さあ、どこから手を付けようか。

よし。

とりあえずは、できるところから。

まずは、書架に雑然と配架された資料の並べ替えから。病院図書館にある多くの資料は医療に関係したものなので、分類にはNLMC1)を使うことにしました。書架の奥に押し込められた謎の段ボールをひとつひとつ開けては持ち主を探したり、資料の間に差し込まれた好意の置き土産(使い込まれた古い教材や娯楽用の週刊誌、英語学習用CDなどの元私物)を見つけては抜き出したり。配架位置を示すための案内板は、クリアポケットとブックエンドを使って作りました。

利用の大半を占めているのは、電子ジャーナル。ウェブ上で提供される雑誌です。電子ジャーナルは出版社や契約形式などによって、アクセスする先や利用方法が異なります。幸い、それらを管理するためのリンクリゾルバ2) は導入されていました。ただし、図書館システム3)はなく、冊子の図書や雑誌は表形式のデータファイルに入力されていただけで、利用者が所蔵を確認することはできませんでした。そこで、リンクリゾルバに冊子体の図書と雑誌も登録できるように設定し、利用者が冊子・電子を分け隔てなく検索できるようにしました。併せて、図書館の設置面積や書架の収容限度を考え、雑誌だけではなく図書の電子化も進めていくことにしました。

ILL4)は、加盟団体の提供する専用システムやFAXを使います。リンクリゾルバの検索結果には、利用者から司書に直接依頼できるフォームがあらかじめ設定されています。ILL以外の依頼(参考調査や代行検索、リモートアクセスの設定など)については、司書自身でウェブフォームを作成し、リンクリゾルバのトップ画面に置きました。選書は、これまでに培った自分の目と、同じ職場にいるさまざまな臨床家の希望やアドバイスを受けながら行います。

ほぼ毎日発生するのは、他機関へのILL依頼。
代行検索や参考調査は、月に数回。
図書の発注や資料の受入は、随時。
支払処理は、月締めに間に合うように。

春に多い質問は、図書館やデータベースの使い方。
徐々にスライド作成や引用方法の質問が増えます。
秋は契約見直しと見積り依頼、稟議書の作成。
年末年始は電子資料のアクセス確認や設定の変更。
年度末は次年度の準備と、今年度のまとめ。

毎日が、一年が、ばたばたと過ぎていきます。
気が付けば、終業時間。時間はいつも足りません。
でも司書は、そんな日々が嫌いではありません。

一から、一人で、図書館を作る。
なかなか経験できることでは、ないからです。

さあ。

今日は、何から始めよう。何が起こるかな。

小さくても、見えなくても、図書館。
一人でも、司書の仕事は変わりません。

  • 1) National LIbrary of Medicine Classification (米国国立医学図書館分類).
    https://classification.nlm.nih.gov/ [cited 2020-10-06]
  • 2) 必要とする文献の全文情報のアクセス方法をリンキングで案内するシステム
  • 3) 図書館に所蔵する資料の登録や貸出状況、発注などを管理するシステム
  • 4) Interlibrary Loan(図書館間貸借、図書館相互協力):図書館同士の互助関係のもと論文のコピーや資料の貸出などを提供し合う仕組み
Copyright (C) yukensha All Rights Reserved.

design pondt.com テンプレート