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タイトル Hidden Library,Invisible Librarian

28 うらしまたろう

うらしまたろう表紙
『うらしまたろう』
時田史郎 再話,
秋野不矩 画,
福音館書店,1974

 皆様こんにちは。いかがお過ごしでしょうか?
 今年も暑い夏がやってきました!私の勤務する図書館も、7カ月ほどの空調工事が終わり、照明もLEDになって、快適な環境に生まれ変わりました。図書館がお休みをいただいている間は、とても小さな臨時窓口での運営でしたが、コンスタントに来ていただく利用者さんもいらっしゃいました。「早く直るといいねぇ」「あとちょっとだね」と、待ち遠しい気持ちを聞かせてくださいました。そんな皆さんが来てくださるのも、窓口を担当してくれているスタッフの力量のなせる技だと思います。みんなのおもてなしスキル、一緒に働く仲間として、頼もしいです!
 さて、図書館は涼しくなりましたが、外は暑さ真っ盛り。暑い時期だからこそ、涼しさを感じたい!そこで、今回は海の中に探検に行きませんか?今回は「海の中」が舞台の絵本をご紹介します。

 一冊目に紹介するのは、『スイミー』(※1)です。長く愛されている絵本ですので、どこかで目にしたことがある、手に取ったことがある、という方が多いのではないでしょうか。
 スイミーは、赤い魚の群れに1匹だけの黒い魚です。大きな魚に襲われて、赤い兄弟たちは食べられてしまいます。さみしくなって、海の中を泳いでいくスイミー。そこで見つけたのは兄弟たちと同じく赤い魚の群れでした。
 この本のキモは、サブタイトルにもある通り、「ちいさなかしこいさかなのはなし」です。谷川俊太郎さんが訳を手がけられていて、わかりやすい言葉でストーリーを進めてくれます。そして、作者のレオ=レオニさんの描く、スイミーのアイディアを実行する場面はもちろん印象的なのですが、淡い色使いの海の世界がとても美しくて、引き込まれてしまう1冊です。

 二冊目は『うみの100かいだてのいえ』(※2)です。『100かいだてのいえ』シリーズの3作目にあたります。このシリーズは縦開きで、展開していく絵本です。
 船に乗っている女の子がカモメにエサをあげようとした時、カモメの羽がぶつかって、大切な人形のテンちゃんが海に落ちてしまいます。テンちゃんが身に着けていたものは全部どこかに行ってしまい、海の中の不思議な泡に吸い込まれていきます。その先には、なんと100階建ての家がありました。いろんな仲間たちに出会いながら、いろんなものをもらったり、とりかえっこしながら、どんどん深いところまで進んでいきます。テンちゃんは無事に女の子のところまで戻れるのでしょうか。
 見開きの長さを最大限に活かして、海の世界のお家が描かれています。1ページ、1階ずつ、かわいい絵とストーリーで展開するので、ゆっくりじっくり、何度でも楽しめる絵本です。テンちゃんのおしゃれにも注目です。

 三冊目は、『うらしまたろう』(※3)です。海のお話、というと思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。日本の昔話といえば、の1冊でもあります。
 漁師の太郎は、ある日、子どもたちにいじめられていた亀を助け、海に逃がしてやります。次の日、漁に出た太郎の目の前に現れたのは、昨日助けた亀、乙姫でした。太郎は、誘われるがままに、海の中の竜宮城へ行きます。最初は楽しく過ごしていましたが、故郷が恋しくなり、乙姫にもらった玉手箱をもって、帰ることになりました。
 日本画家である秋野不矩さんによって描かれた美しく、幻想的な絵は、さみしさ、悲しさ、楽しさなど、太郎の気持ちを伝えてくれるようです。「開けてはいけない」という約束を守れずに玉手箱を開けてしまった太郎の姿は、すでにストーリーを知っている大人にとっても衝撃的です。一方、海の底の竜宮城では、色とりどりの魚たちが泳ぎ、涼やかさが伝わってきます。特に私が大好きなのは、海に潜っていくシーンです。
 昔話は伝えられてきた物語を再話することで、かなり印象が変わります。時田史郎さんの再話では、私自身が子どものころ、読んでもらっていた「うらしまたろう」とはイメージが違い、いじめられていた亀もとても美しいです。乙姫の化身だということで、納得することができます。ぜひ、この本をはじめ、いろんな「うらしまたろう」に触れてみてほしいです。

 今回は、海の中を舞台にする絵本を3冊紹介しましたが、このほかにもたくさんの絵本があります。ぜひ、いろんな絵本を読み進めながら、視覚から涼しさを味わってみてくださいね。


  • ※1『スイミー』,レオ=レオニ 作,谷川俊太郎 訳,好学社,1969
  • ※2『うみの100かいだてのいえ』,いわいとしお 作,偕成社,2014
  • ※3『うらしまたろう』,時田史郎 再話,秋野不矩 画,福音館書店,1974

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