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連載  雨のち晴れ、ときどき絵本

32 どんぐり どんぐり

どんぐり どんぐり表紙
『どんぐりどんぐり』
降矢なな 作
福音館書店,2023

 皆様こんにちは。いかがお過ごしでしょうか?
 秋の風が吹き、木々も色づいて、ザ・秋のシーズンとなりました。秋の実りも本番ですね。イモ、クリ、カボチャのスリートップは、外せませんね。お料理だけではなく、スイーツにも使われて、見てもよし、食べてもよし。
 先日、お買い物に行った先のレストランで、ものすごく繊細なモンブランを発見。これでもかという細さで、マロンクリームがたっぷりかかっていて、まさに山のよう。ものすごく美しくて、心惹かれました。ああ、こんな話をしていると、なんだか食べたくなってきちゃいますね・・・。天高く馬肥ゆる秋、肥える自分との戦いが始まりそうです。

 この時期、わが家の近くでは、あちこちに、いろんな種類のどんぐりが落ちています。拾ってみると、割れていたり、穴が開いていたり。逆に傘が付いたままのものや、つやつやのきれいなものを見つけると、なんだかうれしくて、持って帰ってきます。
 このコラムでも第21回でご紹介した『ぐりとぐら』(※1)も、そもそもはどんぐりや木の実を拾いに行くところからスタートしていますよね。どんぐりを見ると、本の中の「どんぐりを かごいっぱいひろったら、おさとうを たっぷり いれて、にようね」というフレーズが思い浮かびます。
 今回は、そんな「どんぐり」の登場する絵本をご紹介します。そうそう、本によって、どんぐり、ドングリと表記が違うのですが、ご紹介する本に合わせて、このコラムでも記載をしますので、ご了承くださいね。

 まず一冊目は、『3232』(※2)です。この絵本は、わらべうた「どんぐりころちゃん」をモチーフにしています。
 歌を歌いながらどんぐりころちゃんがお出かけです。すると向こうからどんぐりたちがやってきます。みんな同じ特徴をもっていて、みんなころちゃん。どんどん、ころちゃんたちが増えていきます。そこに現れたのはリス。ころちゃんたちはどうなるのでしょうか。
 つやつやした、かわいいお顔のどんぐりころちゃんの表紙が印象的です。わらべうたの楽譜も巻末に収められていますので、歌いながら楽しく読むことのできる1冊です。

 二冊目は、『たったひとつのドングリが ―すべてのいのちをつなぐ―』(※3)です。タイトルの通り、たったひとつのドングリが地面に落ち、そこから芽を出します。木が育ち、その木にトリが止まり・・・と、まるで、たったひとつのドングリから始まって、大きな森を作っているかのような世界の広がりを感じることができます。森林の管理や生態系など、SDGsにも関連している絵本です。
 この絵本はドングリがモチーフですが、見方を変えると、私たち人間の世界も同じなのではないでしょうか。誰か一人の考え方や行動が、周りのみんなと連鎖して、この社会が作られているように感じます。願わくば、その連鎖は、美しいものであってほしいものです。
 絵本という体裁をとっていて、シンプルな言葉で紡がれていますが、子どもたちだけではなく、大人にもぜひ読んでほしい絵本です。

 三冊目は、『どんぐりどんぐり』(※4)です。この絵本は、初出が月刊誌「こどものとも 0.1.2」。どの作品もそうなのですが、長く読み聞かせをすることを考えると、やはり絵本(単行本)として出版されることが待ち遠しいのですが、特に早く絵本になって欲しい~と願っていた1冊です。
 かあさんりすが、どんぐりを拾いに出かける、といったシンプルなお話です。幼い子どもにもわかりやすい言葉でストーリーが進んでいきます。なにより、登場する、りすたちのかわいいこと!かあさんりすを見送る、4匹の子りすたちの目が、かあさんが帰ってきた時に、早く迎えられるようにドアの近くに集まっているところもかわいいです。
 この作品が月刊誌として出版されたころ、作品とリンクするかのように、私自身も子育て真っ最中でした。わが子に手渡してきた絵本のなかでも、特に親子で一緒に楽しんだ絵本の1冊です。当時ピンクが大好きだった娘は、表紙のかわいらしさから、とても気に入ってくれました。何度も読んでいるうちに、落ちているどんぐりを拾う真似をして、かあさんりすの背負っているかごに入れるようなしぐさをするようになりました。そのうち、ひとつ、ふたつ、とどんぐりを数えながら、かごに入れるようになり、ついに、「そうか、りすが5人だから、5個かー」と自分で発見した喜びを感じていたようです。すでに大きくなったわが子ですが、覚えているかなぁなんて思いながら、この本を紹介いたしました。

 今回は、「どんぐり」の絵本を取り上げてみました。今月は特別支援学校のお子さんたちが、図書館見学に来てくれる予定が入っているので、「どんぐりころちゃん」のわらべうたや、「どんぐり」絵本を楽しみたいと思います。どんぐりを見つけたら、このコラムを思い出して、絵本を手にとっていただけたら、とてもうれしいです。


  • ※1 『ぐりとぐら』,中川李枝子 文,大村百合子 絵,福音館書店,1967
  • ※2 『どんぐりころちゃん』,正高もとこ 作・絵,すずき出版,2016
  • ※3 『たったひとつのドングリが ―すべてのいのちをつなぐ―』,
    ローラ・M・シェーファー 作,アダム・シェーファー 作,
    フラン・プレストン=ガノン 絵,せなあいこ 訳,評論社,2018
  • ※4 『よふかしにんじゃ』,バーバラ・ダ・コスタ 文,エド・ヤング 絵,長谷川義史 訳,光村教育図書,2013

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