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連載  雨のち晴れ、ときどき絵本

37 さくらがさくと

さくらがさくと 表紙
『さくらがさくと』
とうごうなりさ 作
福音館書店,2020

 皆様こんにちは。この連載も4年目を迎えました。どんな絵本を紹介しようかと、私自身も毎回わくわくしています。今年度もどうぞよろしくお願いいたします。
 暖かい日と寒い日が交互に訪れながら春を迎えました。私たちの地域では3月頭に河津桜が咲き始め、それが終わるとソメイヨシノ、八重桜と、桜を見るのが楽しみなシーズン真っ最中です。
 そこで、今回は、「桜」というテーマで、絵本を紹介いたします。

 一冊目に紹介するのは、『さくらのふね』(※1)です。優しい桜色に緑色の文字と絵が印象的な表紙の絵本です。
 テントウムシが春の訪れを告げる桜に誘われるように、川に流れる桜の花びらに乗って下っていきます。道中、いろんな植物や動物、虫たちにも出会いながら、川下りの仲間が増えていきます。春を見つけながら、わくわくドキドキの旅が描かれます。
 私は、きくちちきさんの手がける作品が大好きなんですが、その中でもお勧めしたい絵本です。水墨画にカラフルな色がついたような絵が、時に穏やかに、時に躍動的に際立ちます。特に、ふもとに着いた時の桜は圧巻です。遠目もきく絵本ですので、春のおはなし会などにもってこいの1冊です。

 二冊目は、『春の主役 桜』(※2)です。この絵本は、「絵本<気になる日本の木>シリーズ」の1冊として発行されています。
 床の間にかけられた夜桜の掛け軸が印象的な表紙をめくると、桜色の世界に誘われます。満開の桜が画面いっぱいに描かれていて、思わず「わぁ~」と声が出てしまいそうです。
 ですが、この絵本の魅力は、まだまだこれから。実は科学絵本、知識絵本の要素もあわせもっています。桜前線の秘密は、私もこの絵本で学びました。また、桜の品種のお話や桜の名所の紹介など、もりだくさんの内容です。特にラストのシーン、書きかけの手紙と窓から見える桜がとても美しいです。ぜひ手に取っていただきたいのですが、残念ながら、2026年3月現在、この本は絶版のようです。こういうときこそ、図書館の出番です。お近くの図書館で探してみてはいかがでしょうか?おそらく地域の図書館であれば、リクエストなどのサービスも受けられるかと思いますよ。

 三冊目に紹介するのは、『さくらがさくと』(※3)です。この絵本は3月中旬の場面からスタートします。桜並木の前を通る人たちは、それぞれの思いを抱えて暮らしています。そんな人たちを見ながら、桜の木は春の準備です。美しいタッチで桜が開花するまでの様子が描かれます。グレー一色だった街が一気に桜色に変身です。鳥が訪れ、落とした桜を拾ったり、桜祭りの準備が始まったりと、一気ににぎやかです。普段足早に通り過ぎる人たちも、大人から子どもまで、桜の花を見上げ、写真を撮り、桜を満喫しています。
 私のお気に入りのページは、お花見をしている女の子が寝ころんだ時に見える「ピンク色の天井」のシーンです。見開きいっぱいのピンクの天井がとてもリアルで、手を伸ばしたくなります。花が散り、葉が茂るまでの様子も描かれており、表紙は満開の桜、裏表紙は、葉桜の季節が表現されています。

 桜の本はいかがだったでしょうか?本物のお花見もとってもきれいだし、楽しいのですが、いろんな作家さんが描く桜の世界を手にすると、なんだかほんわかした気持ちになってしまうのは私だけでしょうか。ぜひいろんな「桜」に出会っていただけたら嬉しいです。

 「雨のち晴れ、ときどき絵本」が本になります!3年分のエッセイと、同期の絵本専門士たちのエッセイ、座談会の様子など、盛りだくさんの内容を予定しております。
 絵本選びの参考に、また、絵本専門士ってどういう資格なの?など、お伝えしたいと思いますので、ぜひお手に取っていただけたら嬉しいです。


  • ※1 『さくらのふね』,きくちちき 作・絵,小峰書店,2023
  • ※2 『春の主役 桜』,ゆのきようこ 文,早川司寿乃 絵,理論社,2006
  • ※3 『さくらがさくと』,とうごうなりさ 作,福音館書店,2020

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